三菱UFJ信託銀行 法人コンサルティング部
部付部長 中川雅博
Ⅰ はじめに
本年6月総会において、アドバンテスト(東証プライム市場上場)とソラコム(東証グロース市場上場)が、株主総会後倒しのための定款変更を行い、来年の株主総会から招集時期を7月以降に変更する予定である。これまで3月決算会社が株主総会後倒しを行ったことはないため、両社の先例としての意義は大きいと思われる。
「株主総会後倒し」とは、わが国企業が慣例的に議決権基準日を決算日と一致させているところ、議決権基準日を決算日よりも後倒しすることによって、株主総会を従来よりも後倒しして招集することをいう。3月決算会社であれば、基準日を決算日(3月末)ではなく4月末などと定め、株主総会を従来の6月中ではなく7月以降に招集することになる。また、有価証券報告書を開示するタイミングは従来どおり(6月中)で変更せず、株主総会の招集時期を7月以降に遅らせることによって、有価証券報告書の総会前開示を実現する方法を意味することが多い。
「株主総会後倒し」は、経済産業省が2015年4月にとりまとめた持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会の報告書で提言している「基準日の適切な設定」と実質的に同じ内容である。同報告書は、わが国の株主総会が諸外国と比べ決算日後早いタイミングで行われ、かつ6月下旬に集中し、株主の実質的な議案検討や企業との対話を行うための期間が十分でないという問題意識の下、「対話型株主総会プロセス」を実現するため、総会日程や議決権基準日の設定の再検討を求めていた。
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