2024 年5 月総会(2024 年2 月基準日)の調査対象会社は、全国証券取引所上場会社217 社のうちプライム市場上場会社86 社(監査役会設置会社= 45 社、監査等委員会設置会社= 38 社、指名委員会等設置会社= 3 社)である。
本稿は、調査対象会社の招集通知における狭義の招集通知の記載および任意記載事項の内容を分析し、併せて参考となる事例を紹介するものである(議決権行使書、参考書類・事業報告、別紙での案内および別冊の株主通信等での記載を除く)。
Ⅰ 招集通知の外観・体裁の特徴
2024 年5 月総会の調査対象86 社における、招集通知の外観・体裁の特徴は次のとおりである。
① 招集通知のカラー刷り(黒以外を使用)= 45 社(52.3%)
② インデックス付= 34 社(39.5%)
③ 目次付= 38 社(44.2%)
④ 電子提供措置の開始日の記載あり= 63 社(73.3%)
Ⅱ 狭義の招集通知の記載事項
1 招集の決定事項の記載
2024 年5 月総会の調査対象86 社において、会社法298 条、会社法施行規則63 条等に定める「招集の決定事項」のうち、ほとんどの会社で記載があるものを除き、狭義の招集通知に記載された事項の特徴を挙げると図表1 のとおりである。
[図表1] 招集の決定事項の記載状況
記載事項 | 社数(割合) | 記載会社 |
代理人による議決権行使の可否・方法 | 23 社(26.7%) | サンエー、わらべや日洋HD、テラスカイ 等 |
議決権の不統一行使の通知 | 5 社( 2.3%) | セブン&アイHD、ハイデイ日高、イオンモール 等 |
前回総会応当日と離れている理由 | 1 社( 1.2%) | ワールド |
集中日に開催する理由 | 0 社( 0%) | ― |
総会場の変更理由 | 1 社( 1.2%) | フジ |
2 交付書面の記載省略
電子提供制度に基づき、交付書面への記載省略を行った会社は75 社(87.2%)あった。交付書面省略事項を項目別に整理すると図表2 のとおりである(割合は記載省略を行った75 社を母数としている)。
個別注記表および連結注記表については、ほぼすべての会社が交付書面省略事項としている。事業報告の一部を交付書面省略事項をした会社は54 社(72.0%)と7 割を超えている。一方で、連結貸借対照表、貸借対照表、連結損益計算書および損益計算書についてはそれぞれ1 社にとどまっている。
[図表2] 交付書面省略事項の内訳
記載省略事項 | 社数(割合) |
事業報告の一部 | 54 社(72.0%) |
連結注記表 | 73 社(97.3%) |
個別注記表 | 75 社(100%) |
連結株主資本等変動計算書 | 44 社(58.7%) |
株主資本等変動計算書 | 46 社(61.3%) |
連結貸借対照表 | 1 社( 1.3%) |
貸借対照表 | 1 社( 1.3%) |
連結損益計算書 | 1 社( 1.3%) |
損益計算書 | 1 社( 1.3%) |
連結計算書類に係る会計監査報告 | 6 社( 8.0%) |
計算書類に係る会計監査報告 | 6 社( 8.0%) |
監査役等の監査報告 | 6 社( 8.0%) |
Ⅲ 任意記載事項
招集通知における任意の記載事項の特徴を挙げると以下のとおりである。
1 議決権行使の方法
議決権行使の方法に関する任意記載状況は図表3 のとおりである。議決権電子行使プラットフォームの利用が可能である旨を記載している会社は9 割を超えている。そのほか、議決権行使した株主に対して株主優待ポイントを付与する事例、インターネットにより議決権行使した株主に対して抽選でプリペイドカードを贈呈する事例が見られた。
[図表3] 議決権行使の方法に関する任意記載事項
記載項目 | 社数(割合) | 記載会社 |
議決権電子行使プラットフォームの利用 | 80 社(93.0%) | エービーシー・マート、瑞光、ヨンドシーHD 等 |
議決権行使した株主に対する贈呈品等 | 2 社( 2.3%) | イオン、松竹 |
インターネットで議決権行使した株主に対する贈呈品、還元策等 | 4 社( 4.7%) | オークワ、イオンフィナンシャルサービス、吉野家HD 等 |
2 議事運営
議事運営に関する任意記載の状況は図表4 のとおりである。
なお、事前質問を受け付けるとした会社14 社中11 社がバーチャル総会を実施している。
[図表4] 議事運営に関する任意記載事項
記載項目 | 社数(割合) | 記載会社 |
当日の資料等の総会前開示 | 0 社( 0%) | ― |
インターネット等による事前質問の受付 | 14 社(16.3%) | ウエルシアHD、ベクトル、乃村工藝社 等 |
総会当日の質疑応答の手順・要領 | 0 社( 0%) | ― |
総会当日の録画、質疑応答要旨、資料等の後日掲載 | 8 社( 9.3%) | ピックルスHD、あさひ、ライフコーポレーション 等 |
3 招集通知の提供・会場案内
招集通知の提供・会場案内に関する任意記載の状況は図表5 のとおりである。なお、スマートフォン専用閲覧サイトの案内、会場までの経路案内用QR コードの両方について掲載した会社は8 社あった。
[図表5] 招集通知の提供・会場案内に関する任意記載事項
記載項目 | 社数(割合) | 記載会社 |
スマートフォン専用閲覧サイト(「ネットで招集」「スマート招集」)の案内 | 14 社(16.3%) | スギホールディングス、三陽商会、ミニストップ 等 |
障害者差別解消法に関連した環境の整備の取組み | 7社( 8.1%) | J. フロント リテイリング、オークワ、イオン 等 |
会場までの経路案内用QRコード | 12 社(14.0%) | トレジャー・ファクトリー、TSI ホールディングス、ウイングアーク1st 等 |
4 株式・株主
株式・株主に関する任意記載の状況は図表6 のとおりである。株主メモ・株式手続に関するお知らせについては1 割強の会社で記載があった。
[図表6]株式・株主に関する任意の記載事項
記載項目 | 社数(割合) | 記載会社 |
株主との対話に関する基本方針 | 0 社( 0%) | ― |
株主メモ・株式手続に関するお知らせ | 11 社(12.8%) | パルグループHD、IDOM、イオンモール 等 |
株価・出来高の推移、株式分布状況等 | 1 社( 1.2%) | ディップ |
配当・株主還元方針 | 1 社( 1.2%) | イオンフィナンシャルサービス |
株主優待案内 | 7 社( 8.1%) | アダストリア、アレンザHD、オークワ 等 |
株主アンケートの実施、集計結果等 | 3 社( 3.5%) | リンガーハット、イオン、吉野家HD |
IR・SR 活動の報告・予定 | 5 社( 5.8%) | 安川電機、しまむら、イオンフィナンシャルサービス 等 |
5 懇談会・説明会・お土産
懇談会・説明会・お土産に関する任意記載の状況は図表7 のとおりである。土産を配付しない旨を記載した会社が59 社(68.6%)となっており、約7 割の会社でお土産がない旨を招集通知上で明記している。
[図表7] 懇談会・説明会・お土産に関する任意記載事項
記載項目 | 社数(割合) | 記載会社 |
株主懇談会・説明会・展示会等の開催あり(オンラインでの開催を含む) | 6 社( 7.0%) | メディアドゥ、ベクトル、古野電気 等 |
株主懇談会・説明会・展示会等の開催なし | 5 社( 5.8%) | DD グループ、ライフコーポレーション、アークス 等 |
総会とは別日に株主懇談会・説明会・展示会等の開催あり(オンラインでの開催を含む) | 0 社( 0%) | ― |
お土産の配付あり(郵送、後日配付を含む) | 1 社( 1.2%) | スギホールディングス |
お土産の配付なし | 59 社(68.6%) | スタジオアリス、北の達人コーポレーション、リソー教育 等 |
6 会社概要・ガバナンス体制
会社概要・ガバナンス体制に関する任意記載の状況は図表8 のとおりである。ESG、SDGs、サステナビリティ関連について約1 割の会社で記載があった。
[図表8] 会社概要・ガバナンス体制に関する任意記載事項
記載項目 | 社数(割合) | 記載会社 |
会社概要 | 0 社( 0%) | ― |
コーポレート・ガバナンス(ガイドライン、取組み等) | 3 社( 3.5%) | いちご、J. フロント リテイリング、イオンモール |
社外取締役、監査役等の紹介、メッセージ等 | 0 社( 0%) | ― |
ESG、SDGs、サステナビリティ関連 | 9 社(10.5%) | DCM ホールディングス、壱番屋、ミニストップ 等 |
7 開示・IR
開示・IR に関する任意記載の状況は図表9 のとおりである。「長期ビジョン、中期経営計画、事業への取組み等」および「財務ハイライト(決算・業績の概要等)」の両方について記載した会社は3 社あった。
[図表9] 開示・IR に関する任意記載事項
記載項目 | 社数(割合) | 記載会社 |
長期ビジョン、中期経営計画、事業への取組み等 | 5 社(5.8%) | J. フロント リテイリング、しまむら、イオンモール 等 |
財務ハイライト(決算・業績の概要等) | 6 社(7.0%) | アダストリア、壱番屋、フジ 等 |
8 会社一般
会社一般に関する任意記載の状況は図表10 のとおりである。「企業理念(経営理念、社是、行動指針等)」、「株主のみなさまへ(トップのメッセージ、インタビュー)」を記載する会社が一定数あった。
[図表10] 会社一般に関する任意記載事項
記載項目 | 社数(割合) | 記載会社 |
企業理念(経営理念、社是、行動指針等) | 22 社(25.6%) | ドトール・日レスHD、久光製薬、コーナン商事 等 |
株主のみなさまへ(トップのメッセージ、インタビュー) | 25 社(29.1%) | イートアンドHD、SFP HD、ダイセキ 等 |
当期のトピックス(1 年間の出来事、取組み等)、ハイライト等 | 12 社(14.0%) | いちご、DCM HD、イオンモール 等 |
会社(グループ)案内、事業・商品案内 | 10 社(11.6%) | パルグループHD、壱番屋、三陽商会 等 |
よくある質問(Q&A) | 0 社( 0%) | ― |
Ⅳ 記載事例
[事例1] 電子提供制度に対応した目次上の工夫(ローソン)
目次上に*印を付けてサマリー版招集通知の印刷対象外である項目を明示、ウェブサイトを確認するように記載している。
[事例2] 前回定時株主総会応当日と離れている理由(ワールド)
目的事項の日時の記載について、下線および枠囲みで強調した上で、事業年度末日の変更のため開催日が前回定時株主総会の応当日と離れている旨を記載している。
[事例3] 障害者差別解消法対応(J. フロント リテイリング)
会場において配慮が必要な場合に事前に連絡できるよう問い合わせフォームを用意し、URLを記載している。
[事例4] ライブ配信中のコメント受付け(ディップ)
ライブ配信中にテキスト入力によりコメントを送ることができる旨を案内し、コメントに対しては株主総会または後日ウェブサイトにおいて紹介・回答する予定であるとしている。
[事例5] 株主優待ポイントの付与(松竹)
お土産の代替として、議決権行使した株主に株主優待ポイントを付与することとして書面・インターネット等による事前の議決権行使を促している。
[事例6] お土産についての案内(スギホールディングス)
お土産を株主総会終了後に株主出席票と引き換えに進呈する旨記載している。また、持参した議決権行使用紙の枚数にかかわらず1 名につき1 個である旨も記載している。
[事例7] サステナビリティに関する記載(DCM ホールディングス)
社内討議とステークホルダーとの対話により特定したSDGs の8 つの重点課題グループを22 の重点課題(マテリアリティ)について、「重点課題の重要度マップ」として視覚化して掲載している。
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