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付議議案の分析と記載事例 ── 2024年5月総会プライム市場上場会社86社 ──

 2024 年5 月総会(2024 年2 月基準日)の調査対象会社は、全国証券取引所上場会社217 社のうちプライム市場上場会社86 社(監査役会設置会社= 45 社、監査等委員会設置会社= 38 社、指名委員会等設置会社= 3 社)である。

 本稿は、調査対象会社の付議議案の内容を分析し、併せて参考となる事例を紹介するものである。

Ⅰ 剰余金処分議案

 1 剰余金処分議案の上程状況

 2024 年5 月総会の調査対象86 社において、剰余金処分議案を付議した会社は51 社(59.3%)あった。

 2024 年5 月総会の調査対象86 社のうち、剰余金の配当等を取締役会が決定する旨(剰余金の配当等を決定する機関の特則。会社法459 条参照)を定款で定めていた会社(特則会社)は42 社48.8%)である。

 なお、本総会の定款変更で、特則会社になった会社は2社(ピックルスホールディングス、PR TIMES)あった。

[図表1] 5 月総会会社:特則会社数

  総会前 総会後 増減
特則会社 42社(48.8%) 44社(51.2%) +2社(+2.4pt)

 2 議案内容・期末有配会社の数

 (1) 剰余金の配当・処分

 剰余金処分議案を付議した51 社の内容を見ると、図表2 のとおりである。

[図表2] 剰余金処分議案の内容

議案の内容 社数
剰余金の配当と剰余金の処分を付議している会社 9社(17.6%)
剰余金の配当についてのみ付議している会社 42社(82.4%)
剰余金の処分についてのみ付議している会社 0社(  0.0%)
 (2)  期末有配会社の数

 上記特則会社42 社のうち30 社が取締役会で期末配当を決議している。これらを含め普通株式に対して期末配当を行った会社は81 社(94.2%)となった。

 なお、特則会社42 社のうち剰余金配当議案を株主総会に付議した会社が12 社(28.6%)あった。

 3 参考書類の記載内容

 (1) 配当指標の記載

 参考書類において、「安定配当・内部留保」について留意する等の記載をした会社が38社(安定配当32社、内部留保21社)あった。

 また、具体的な目標数値・基準値等を伴う配当指標を記載した会社(事業報告を参照としている会社を含む)は14 社あった。

 配当指標の内容は図表3 のとおりである(重複集計。かっこ内は配当議案を付議した51 社に対する割合)。

[図表3] 配当指標の内容

配当指標の内容 社数(割合) 記載会社
(連結)配当性向の目標値(基準値) 9社(17.6%) スタジオアリス、北の達人コーポレーション、瑞光 等
(連結)還元(配分)性向の目標値(基準値) 1社(  2.0%) セブン&アイ・ホールディングス
DOE(純資産配当率、株主資本配当率)の目標値(基準値) 4社(  7.8%) いちご、三陽商会、乃村工藝社 等
具体的な配当金額の目標値(下限、基準値) 1社(  2.0%) 東宝

 図表3 の「(連結)配当性向の目標値(基準値)」について記載した11 社の内訳は、図表4 のとおりである。

[図表4] 配当性向の記載の内訳

配当性向の記載 記載会社
配当性向30~40% ドトール・日レスホールディングス
配当性向35%以上 オンワードホールディングス
連結配当性向30% 北の達人コーポレーション、竹内製作所、瑞光
連結配当性向40% わらべや日洋ホールディングス
親会社に帰属する当期純利益の30% IDOM
親会社に帰属する当期純利益の33.3% スタジオアリス
年間40 円の配当をベースに配当性向30%以上 東宝
 (2) 記念配当・特別配当の記載

 「記念配当・特別配当」について記載した会社は3 社あった。記念配当・特別配当の記載の内訳は、図表5 のとおりである。

[図表5] 記念配当・特別配当の内容

  社数(割合) 記載会社
周年配当 2社(3.9%) ワールド、竹内製作所
事業成果に基づく配当 1社(2.0%) ダイセキ
 (3) その他の記載

 その他の特徴的な記載は、図表6 のとおりである(重複集計。かっこ内は配当議案を付議した51社に対する割合)。

[図表6] その他の特徴的な記載

記載事項 社数(割合) 具体例
配当金等の推移を表・グラフで記載 12社(23.5%) イートアンドホールディングス、ローツェ、コーナン商事 等
株式併合・分割に伴う調整を行っている旨を記載 2社(  3.9%) エービーシー・マート、セブン&アイ・ホールディングス
自己株式の取得・消却の具体的な実績・方針を記載 0社(  0.0%)
当期の配当性向・還元性向等の実績値等を記載 3社(  5.9%) ライフコーポレーション、オークワ、乃村工藝社

 4 記載事例

 [事例1] 特則会社において剰余金処分議案を総会に付議する理由を記載(いちご

 剰余金の処分に関する決定を取締役会により決議することが可能であるが、ガバナンスのさらなる向上および株主重視に基づく株主との対話拡充と意思確認を目的として、剰余金処分議案を株主総会議案として付議した旨説明している。

 [事例2] 配当金、配当性向およびDOE の推移を表・グラフで記載(ライフコーポレーション

 「ご参考」として、1 株当たりの配当金、配当性向および株主資本配当率(DOE)の推移について、表およびグラフで記載している。

 [事例3] 記念配当の実施(ダイセキ

 単体の営業利益がはじめて100 億円を上回ったことを理由として、1 株当たり2 円の記念配当を実施している。

 

Ⅱ 定款変更議案

 2024 年5 月総会の調査対象86 社において、定款変更議案を付議した会社は15 社(監査役会設置会社45 社のうち9 社、監査等委員会設置会社38 社のうち6 社、指名委員会等設置会社3 社のうち0社)あった。

 各社の変更事項は図表7 のとおりである(かっこ内は定款変更議案を付議した15 社に対する割合)。

[図表7] 定款変更議案の内容

変更事項 社数(割合)
商号の変更 2社(13.3%)
事業目的の変更 5社(33.3%)
発行可能株式総数の変更 1社(6.7%)
自己株式取得の規定削除 1社(6.7%)
単元未満株式の買増請求の規定新設 1社(6.7%)
株主総会招集権者・議長の規定変更 4社(26.7%)
監査等委員会設置会社への移行 2社(13.3%)
(監査役会設置会社)取締役の定員の増員 1社(6.7%)
監査役の責任軽減の規定新設 1社(6.7%)
補欠監査役の予選・任期調整の規定変更 1社(6.7%)
重要な業務執行の委任の規定新設 2社(13.3%)
補欠の監査等委員である取締役の予選・任期調整の規定新設 2社(13.3%)
常勤監査等委員の規定新設 1社(6.7%)
取締役会招集権者・議長の規定変更 3社(20.0%)
取締役の責任軽減の規定新設・変更 2社(13.3%)
役付取締役の規定変更 1社(6.7%)
剰余金の配当等の決定機関の規定新設(株主総会決議を排除しない) 2社(13.3%)
中間配当の規定変更 1社(6.7%)

 1 議案の内容

 (1) 総則

 ア 商号の変更
 調査対象会社のうち商号を変更した会社は2 社あった。

商号変更会社一覧(英文商号のみを変更した会社を除く)

ベイカレント・コンサルティング➝ベイカレント
RPAホールディングス➝オープングループ

 イ 事業目的の変更
 調査対象会社のうち事業目的を変更した会社は5社あった。

 (2) 株 式

 株式関連の変更としては、発行可能株式総数の変更(1 社。下記一覧参照)、自己株式取得の規定削除(1社。ピックルスホールディングス)、単元未満株式の買増請求の規定新設(1社。PR TIMES)があった。

■発行可能株式総数変更会社一覧

エービーシー・マート(334,500,000株→742,000,000株)
 (3) 株主総会

 株主総会関連の変更としては、株主総会招集権者・議長の規定を変更した会社が4 社あった(クリーク・アンド・リバー社、平和堂、アークス 等)。

 (4) 機関設計の変更

 機関設計の変更を行った会社は2 社あった(下記一覧参照)。

機関設計変更会社一覧

・監査等委員会設置会社へ移行
 アダストリア  ライフコーポレーション
 (5) 監査役会設置会社

 監査役会設置会社において、役員関連の規定の変更内容としては、①取締役の定員の増員(1 社。ウエルシアホールディングス)、②監査役の責任軽減の規定新設(1 社。ローツェ)、③補欠監査役の予選・任期調整の規定変更(1 社。PR TIMES)があった。

 (6) その他取締役・取締役会

 そのほか、取締役・取締役会関連の規定の変更としては、①取締役会招集権者・議長の規定変更(3 社。クリーク・アンド・リバー社、平和堂、アークス)、②取締役の責任軽減の規定新設・変更(2 社。ローツェ、ライフコーポレーション)、③ 役付取締役の規定変更(1 社。パルグループホールディングス)があった。

 (7) 計 算

 計算関連の変更としては、①剰余金の配当等の決定機関の規定新設(株主総会決議を排除しない)(2 社。ピックルスホールディングス、PR TIMES)、② 中間配当の規定変更(1 社。PR TIMES)があった。

 2 記載事例

[事例1] 商号の変更(ベイカレント・コンサルティング

 吸収分割による持株会社体制への移行に伴い商号を変更している。

[事例2] 役付取締役の規定変更(パルグループホールディングス

 創業者の代表取締役退任を機に、経営体制の強化・充実、グループの持続的な発展と企業価値向上を目指すことを理由として、役付取締役の規定を変更している。

 

Ⅲ 役員選任議案

 1 取締役(監査等委員である取締役を除く)選任議案

 (1) 付議の状況

 2024 年5 月総会の調査対象86 社において、取締役(監査等委員である取締役を除く)選任議案を付議した会社は84 社あった。各社の取締役(監査等委員である取締役を除く)選任議案の提案の理由は図表8 とおりである(重複集計)。

図表8] 取締役(監査等委員である取締役を除く)選任議案の付議理由

付議理由 社数(割合) 記載会社
任期満了による選任 81社(96.4%) サンエー、ピックルスホールディングス、トレジャー・ファクトリー 等
増員による選任 14社(16.7%) わらべや日洋ホールディングス、スギホールディングス、リンガーハット 等
辞任による選任 3社( 3.6%) 北の達人コーポレーション、ベルシステム24ホールディングス、イズミ
退任による選任 1社( 1.2%) スタジオアリス

 このうち、改選に伴い員数を増員する会社で増員理由を記載している会社が13 社あった。増員理由としては、「経営体制の強化」を挙げる会社が11 社(パルグループホールディングス、スギホールディングス、オークワ 等)と最も多かった(同趣旨の語を含む)。そのほか、「中長期的な企業価値向上」、「中期経営計画の推進」を理由に挙げる会社もあった。

 また、改選に伴い員数を減員する会社12 社のうち、減員理由を記載している会社が5 社あった。減員理由としては、「戦略的・機動的な意思決定」を挙げる会社が3 社(バロックジャパンリミテッド、ベルシステム24 ホールディングス、コーナン商事)と最も多かった。

 (2) 取締役(監査等委員である取締役を除く)選任議案についての法定記載事項

 ア すべての候補者について記載すべき事項(会社法施行規則74条1項~3項)
 取締役(監査等委員である取締役を除く)の選任議案を付議する場合、候補者の氏名、生年月日および略歴などのほか、①監査等委員会の意見(会社法342条の2第4項)の内容の概要、②責任限定契約の内容の概要、③補償契約の内容の概要、④役員等賠償責任保険契約の内容の概要、⑤特別の利害関係の事実の概要(公開会社であるとき)、⑥候補者が現に親会社等(自然人であるものに限る)である旨(公開会社かつ他の者の子会社等であるとき)、⑦現在または過去10年間の親会社または兄弟会社の業務執行者としての地位および担当(公開会社かつ他の者の子会社等であるとき)を記載しなければならない(会社法施行規則74条1項~3項)。

 調査対象会社における上記①~⑦の記載状況は図表9 のとおりである。

[図表9] 取締役(監査等委員である取締役を除く)候補者についての記載事項

記載事項 社数(割合) 記載会社
① 監査等委員会の意見(会社法342条の2第4項)の内容の概要 29社(34.5%) 下記参照
② 責任限定契約の内容の概要 65社(77.4%) DCMホールディングス、メディアドゥ、PR TIMES
③ 補償契約の内容の概要 3社(3.6%) ローソン、DCMホールディングス、古野電気
④ 役員等賠償責任保険契約の内容の概要 80社(95.2%) ディップ、J.フロント リテイリング、クリエイト・レストランツ・ホールディングス
⑤ 公開会社であるときは、特別の利害関係の事実の概要 13社(15.5%) リソー教育、髙島屋、イオンモール
⑥ 候補者が現に親会社等である旨 2社(2.4%) 北の達人コーポレーション、DDグループ
⑦ 現在または過去10年間の親会社または兄弟会社の業務執行者としての地位および担当 6社(7.1%) アレンザホールディングス、壱番屋、イオンフィナンシャルサービス

 ①のうち、候補者が適任である旨等を記載した会社が21 社(ドトール・日レスホールディングス、瑞光、安川電機 等)、指摘すべき事項、特段の意見はない旨等を記載した会社が8 社(SFPホールディングス、壱番屋、松屋 等)あった。

 イ 社外取締役候補者について記載すべき事項(会社法施行規則74条4項)

 調査対象86 社のうち、取締役(監査等委員である取締役を除く)選任議案において社外取締役候補者がいた会社は65 社あった。

 社外取締役候補者に関しては、社外取締役である旨、社外取締役候補者とした理由などのほか、①自社役員在任中に行われた不当な業務執行の事実等、②過去5 年間の他社役員在任中における不当な業務執行の事実等、③候補者と会社またはその特定関係事業者との一定の事実関係を記載しなければならない(会社法施行規則74 条4 項)。

 調査対象会社における上記①~③の記載状況は図表10 のとおりである(特定関係事業者の明記がない事例について一部推定によるものを含む)。

[図表10] 社外取締役候補者についての記載事項

記載事項 社数(割合) 記載会社
① 自社役員在任中に行われた不当な業務執行の事実等 0社( 0%)
② 過去5年間の他社役員在任中における不当な業務執行の事実等 4社(6.2%) セブン&アイ・ホールディングス、TSIホールディングス、オンワードホールディングス
③ 候補者と会社またはその特定関係事業者との以下㋐~㋕の事実関係    
㋐ 過去に会社またはその子会社の業務執行者または非業務執行役員であったこと 4社(6.2%) いちご、ピックルスホールディングス、エーアイテイー 等
㋑ 現在または過去10年間に会社の親会社等であること 0社( 0%)
㋒ 現在、会社の特定関係事業者の業務執行者もしくは非業務執行役員であること、または過去10年間に会社の特定関係事業者であったこと 2社(3.1%) スタジオアリス、バロックジャパンリミテッド
㋓ 会社または会社の特定関係事業者から多額の金銭その他の財産を受ける予定があり、または過去2年間に受けていたこと 0社( 0%)
㋔ 親会社等または会社または会社の特定関係事業者の業務執行者または役員の親族その他これに準ずる者であること 0社( 0%)
㋕ 過去2年間に合併等により他の会社の権利義務を会社が承継または譲り受けた場合に、その合併等の直前に他社の業務執行者であったこと 0社( 0%)

 2 監査等委員である取締役選任議案

 (1) 付議の状況

 調査対象86 社のうち、監査等委員である取締役選任議案を付議した会社は27 社あった。各
社の監査等委員である取締役選任議案の提案の理由は図表11 とおりである(重複集計)。

[図表11]監査等委員である取締役選任議案の付議理由

付議理由 社数 記載会社
任期満了による選任 20社(74.1%) サンエー、ヨンドシーホールディングス、ダイセキ 等
増員による選任 4社(14.8%) ディップ、竹内製作所、薬王堂ホールディングス 等
辞任による選任 4社(14.8%) 北の達人コーポレーション、ワールド、ワキタ 等
退任による選任 2社(7.4%) クリエイト・レストランツ・ホールディングス、東宝

 このうち、改選に伴い員数を増員する会社で増員理由を記載している会社が3 社あった。増員理由としては、「監査体制の強化」を挙げる会社が3 社(わらべや日洋ホールディングス、竹内製作所、薬王堂ホールディングス)あった。そのほか、「中長期的な企業価値向上」を挙げる会社もあった。

 また、改選に伴い員数を減員する会社が1 社あったが、減員理由の記載はなかった。

 (2) 監査等委員である取締役選任議案についての法定記載事項

 ア すべての候補者について記載すべき事項(会社法施行規則74条の3第1項~3項)
 監査等委員である取締役の選任議案を付議する場合、候補者の氏名、生年月日および略歴などのほか、①特別の利害関係の事実の概要、②責任限定契約の内容の概要、③補償契約の内容の概要、④役員等賠償責任保険契約の内容の概要、⑤候補者が現に親会社等(自然人であるものに限る)である旨(公開会社かつ他の者の子会社等であるとき)、⑥現在または過去10 年間の親会社または兄弟会社の業務執行者としての地位および担当(公開会社かつ他の者の子会社等であるとき)を記載しなければならない(会社法施行規則74 条の3 第1 項~3 項)。

 調査対象会社における上記①~⑥の記載状況は図表12 のとおりである。

[図表12] 監査等委員である取締役候補者についての記載事項

記載事項 社数 記載会社
① 特別の利害関係の事実の概要 0社(0%)
② 責任限定契約の内容の概要 25社(92.6%) コメダホールディングス、ヨンドシーホールディングス、平和堂 等
③ 補償契約の内容の概要 1社(3.7%) DCMホールディングス
④ 役員等賠償責任保険契約の内容の概要 27社(100%) ワキタ、ミスターマックス・ホールディングス、アークランズ 等
⑤ 候補者が現に親会社等(自然人であるものに限る)である旨 0社(0%)
⑥ 現在または過去10年間に親会社または兄弟会社の業務執行者としての地位および担当 1社( 3.7%) SFPホールディングス

 イ 社外取締役候補者について記載すべき事項(会社法施行規則74条の3第4項)
 調査対象会社86社のうち、監査等委員である社外取締役候補者がいた会社は26社あった。

 社外取締役候補者に関しては、社外取締役である旨、社外取締役候補者とした理由などのほか、①自社役員在任中に行われた不当な業務執行の事実等、②過去5年間の他社役員在任中における不当な業務執行の事実等、③候補者と会社またはその特定関係事業者との一定の事実関係を記載しなければならない(会社法施行規則74条の3第4項)。

 調査対象会社における上記①~③の記載状況は図表13 のとおりである(特定関係事業者の明記がない事例について一部推定によるものを含む)。

[図表13]社外取締役についての記載事項

記載事項 社数(割合) 記載会社
① 自社役員在任中に行われた不当な業務執行の事実等 0社( 0%)
② 過去5年間の他社役員在任中における不当な業務執行の事実等 1社(3.8%) 東宝
③ 候補者と会社またはその特定関係事業者との以下㋐~㋕の事実関係    
㋐ 過去に会社またはその子会社の業務執行者または非業務執行役員であったこと 1社(3.8%) アレンザホールディングス
㋑ 現在または過去10年間に会社の親会社等であること 0社( 0%)
㋒ 現在、会社の特定関係事業者の業務執行者もしくは非業務執行役員であること、または過去10年間に会社の特定関係事業者であったこと 0社( 0%)
㋓ 会社または会社の特定関係事業者から多額の金銭その他の財産を受ける予定があり、または過去2年間に受けていたこと 0社( 0%)
㋔ 親会社等または会社または会社の特定関係事業者の業務執行者または役員の親族その他これに準ずる者であること 0社( 0%)
㋕ 過去2年間に合併等により他の会社の権利義務を会社が承継または譲り受けた場合に、その合併等の直前に他社の業務執行者であったこと 0社( 0%)

 3 監査役選任議案

 (1) 付議の状況

 2024 年5 月総会の調査対象86 社において、監査役選任議案を付議した会社は25 社あった。各社の監査役選任議案の提案の理由は図表14 のとおりである(重複集計)。

[図表14] 監査役選任議案の付議理由

付議理由 社数(割合) 記載会社
任期満了による選任 20社(80.0%) パルグループホールディングス、三陽商会、しまむら 等
増員による選任 2社(8.0%) クリーク・アンド・リバー社、スギホールディングス
辞任による選任 5社(20.0%) テラスカイ、フジ、イオンディライト 等
退任による選任 1社(4.0%) チヨダ

 このうち、改選に伴い員数を増員する会社で増員理由を記載している会社が2 社あった。増員理由としては、「監査体制の強化」を挙げる会社が2 社(クリーク・アンド・リバー社、スギホールディングス)あった。

 また、改選に伴い員数を減員する会社が1 社あった。減員理由として、「コーポレート・ガバナンスの実効性が引き続き確保できること」が挙げられた(バロックジャパンリミテッド)。

 (2) 監査役選任議案についての法定記載事項

 ア すべての候補者について記載すべき事項(会社法施行規則76条1項~3項)

 監査役の選任議案を付議する場合、候補者の氏名、生年月日および略歴などのほか、①特別の利害関係の事実の概要、②責任限定契約の内容の概要、③補償契約の内容の概要、④役員等賠償責任保険契約の内容の概要、⑤候補者が現に親会社等(自然人であるものに限る)である旨(公開会社かつ他の者の子会社等であるとき)、⑥現在または過去10年間の親会社または兄弟会社の業務執行者としての地位および担当(公開会社かつ他の者の子会社等であるとき)を記載しなければならない(会社法施行規則76条1項~3項)。

 調査対象会社における上記①~⑥の記載状況は図表15のとおりである。

[図表15] 監査役候補者についての記載事項

記載事項 社数(割合) 記載会社
① 特別の利害関係の事実の概要 0 社( 0%)
② 責任限定契約の内容の概要 22 社(88.0%) トレジャー・ファクトリー、久光製薬、ベルク 等
③ 補償契約の内容の概要 0 社( 0%)
④ 役員等賠償責任保険契約の内容の概要 21 社(84.0%) ローソン、三陽商会、イオンフィナンシャルサービス 等
⑤ 候補者が現に親会社等(自然人であるものに限る)である旨 0 社( 0%)
⑥ 現在および過去10 年間の親会社または兄弟会社の業務執行者としての地位および担当 2 社( 8.0%) イオンファンタジー、ミニストップ

 イ 社外監査役候補者について記載すべき事項(会社法施行規則76条4項)

 調査対象86社のうち、社外監査役候補者がいた会社は21社あった。

 社外監査役候補者に関しては、社外監査役である旨、社外監査役候補者とした理由などのほか、①自社役員在任中に行われた不当な業務執行の事実等、②過去5年間の他社役員在任中における不当な業務執行の事実等、③候補者と会社またはその特定関係事業者との一定の事実関係を記載しなければならない(会社法施行規則76条4項)。

 調査対象会社における上記①~③の記載状況は図表16 のとおりである(特定関係事業者の明記がない事例について一部推定によるものを含む)。

[図表16] 社外取締役についての記載事項

項目 社数 記載会社
① 自社役員在任中に行われた不当な業務執行の事実等 0社(0%)
② 過去5年間の他社役員在任中における不当な業務執行の事実等 0社(0%)
③ 候補者と会社またはその特定関係事業者との以下㋐~㋕の事実関係    
㋐ 過去に会社またはその子会社の業務執行者または非業務執行役員であったこと 0社(0%)
㋑ 現在または過去10年間に会社の親会社等であること 0社(0%)
㋒ 現在、会社の特定関係事業者の業務執行者もしくは非業務執行役員であること、または過去10年間に会社の特定関係事業者であったこと 0社(0%)
㋓ 会社または会社の特定関係事業者から多額の金銭その他の財産を受ける予定があり、または過去2年間に受けていたこと 0社(0%)
㋔ 親会社等または会社または会社の特定関係事業者の業務執行者または役員の親族その他これに準ずる者であること 0社(0%)
㋕ 過去2年間に合併等により他の会社の権利義務を会社が承継または譲り受けた場合に、その合併等の直前に他社の業務執行者であったこと 0社(0%)

 4 役員選任議案における任意記載事項

 上記の法定記載事項のほか、近時は、コーポレートガバナンス・コードに対応した事項等、機関投資家や個人株主の要望を招集通知に任意に記載する傾向が見られる。役員選任議案における任意記載事項の特徴として、以下のものがある(母数は役員選任議案を付議した84社)。

 (1) 個々の候補者に関する記載

 ア 概要
 個々の候補者に関する任意の記載事項の調査結果は図表17 のとおりである。

記載事項 社数(割合) 記載会社
① 候補者の顔写真を掲載 28社(33.3%) ディップ、イートアンドホールディングス、DCMホールディングス 等
② 候補者のふりがなを掲載 84社(100.0%) スタジオアリス、あさひ、バロックジャパンリミテッド 等
③ 新任である旨を記載 62社(73.8%〔新任候補者がいなかった22社を除く62社に対して100.0%〕) エスフーズ、北の達人コーポレーション、久光製薬 等
④ 社外でない候補者の選任理由を記載 82社(97.6%) チヨダ、オークワ、しまむら 等
⑤ 社外でない候補者の在任年数を記載 27社(32.1%) 古野電気、三陽商会、イオンモール 等
⑥ 再任候補者の取締役会、監査役会出席状況を記載 50社(59.5%) DDグループ、コメダホールディングス、メディアドゥ 等
⑦ 任意の指名・報酬委員会への出席状況を記載 1社(1.2%) セブン&アイ・ホールディングス
⑧ 候補者の抱負・メッセージを記載 1社(1.2%) いちご

 イ 候補者の顔写真

 上記のとおり、役員選任議案を付議した84 社のうち、候補者の顔写真を掲載した会社は28 社(33.3%)であった。

 顔写真を掲載した会社について期末時価総額別に分析したものが図表18 である。

 「1,000 億円以上3,000 億円未満」(48.3%)、「3,000 億円以上5,000 億円未満」(50.0%)、「5,000 億円以上」(62.5%)のレンジの会社で、顔写真を掲載する会社が比較的多くなっている。

[図表18] 顔写真の掲載

 ウ 再任候補者の取締役会・監査役会の出席状況

 上記のとおり、役員選任議案を付議した84 社のうち、再任候補者の取締役会・監査役会の出席状況を記載した会社は50 社(59.5%)あった。

 再任候補者の取締役会・監査役会の出席状況を記載した会社を期末時価総額別に分析したものが図19 である。

 「1,000 億円以上3,000 億円未満」(79.3%)、「3,000 億円以上5,000 億円未満」(83.3%)のレンジでは、全社で見た記載割合(59.5%)よりも高い比率となっている。

[図表19] 取締役会・監査役会の出席状況の記載

 (2) 取締役会・監査役会の構成・活動に関する記載

 ア 概要
 取締役会・監査役会の構成・活動に関する任意の記載事項の調査結果は図表20 のとおりである。

[図表20] 取締役会・監査役会の構成・活動に関する任意記載事項

記載事項 社数(割合) 記載会社
① 候補者の一覧表(サマリー情報) 57 社(67.9%) リンガーハット、髙島屋、松屋 等
② スキル・マトリックス 71 社(84.5%) 平和堂、松竹、東宝 等
③ 候補者の性別 27 社(32.1%) エービーシー・マート、北の達人コーポレーション、西松屋チェーン 等
④ 取締役会の実効性評価の概要 0 社 
⑤ コーポレート・ガバナンス体制、取組み等 4 社( 4.8%) ベルシステム24 ホールディングス、吉野家ホールディングス、ミニストップ 等

 イ 候補者の一覧表

 上記のとおり、役員選任議案を付議した84 社のうち、候補者の一覧表(サマリー情報)を記載した会社は57 社(67.9%)あった。

 候補者の一覧表(サマリー情報)を記載した会社について期末時価総額別に分析したものが図表21 である。 

 「1,000 億円以上3,000 億円未満」(89.7%)、「3,000 億円以上5,000 億円未満」(83.3%)のレンジでは、全社で見た記載割合(67.9%)よりも高い比率となっている。

[図表21] 候補者の一覧表の記載

 ウ スキル・マトリックス

 上記のとおり、役員選任議案を付議した84 社のうち、スキル・マトリックスを記載した会社は71 社(84.5%)あった。

 スキル・マトリックスを記載した会社について期末時価総額別に分析したものが図表22 である。

 多くの会社でスキル・マトリックスの記載がされており、いずれのレンジでも7 割以上の会社がスキル・マトリックスを記載している。

[図表22] スキル・マトリックスの記載

 エ 候補者の性別

 上記のとおり、役員選任議案を付議した84 社のうち、候補者の性別を記載した会社は27 社(32.1%)あった。

 候補者の性別を記載した会社について期末時価総額別に分析したものが図表23 である。

 「500 億円以上1,000 億円未満」(35.7%)、「1,000 億円以上3,000 億円未満」(37.9%)、「5,000 億円以上」(50.0%)のレンジでは、全社で見た記載割合(32.1%)よりも高い比率となっている。

[図表23] 候補者の性別の記載

 (3) 候補者の選任手続に関する記載

 候補者の選任手続に関する任意の記載事項の調査結果は図表24 のとおりである。

[図表24] 候補者の選任手続に関する任意記載事項

記載事項 社数(割合) 記載会社
候補者の指名方針・手続 15 社(17.9%) ローソン、ドトール・日レスホールディングス、イオンフィナンシャルサービス 等
指名諮問委員会(異なる名称を含む)の設置・審議 27 社(32.1%) イートアンドホールディングス、アレンザホールディングス、ワールド 等
 (4) 社外役員候補者の独立性に関する記載

 社外役員候補者の独立性に関する任意の記載事項の調査結果は図表25 のとおりである。

[図表25] 社外役員候補者の独立性に関する任意記載事項

記載事項 社数(割合) 記載会社
独立役員(候補者)である旨を記載 79 社(94.0%) サンエー、パルグループホールディングス、ウエルシアホールディングス 等
独立役員候補者の属性情報・注記を記載 11 社(13.1%) ローツェ、コーナン商事、ダイセキ 等
独立性基準を記載(ウェブサイト参照を含む) 19 社
(22.6%)
久光製薬、竹内製作所、イオン 等

 5 記載事例

[事例1] 取締役の増員理由(ウエルシアホールディングス

 経営監督機能およびコーポレートガバナンス体制の強化を理由として挙げて、取締役を増員する議案を上程している。

[事例2] 取締役の減員理由(壱番屋

 執行役員制度の導入に伴い、経営体制の効率化を図ることを理由として挙げて、取締役を減員する議案を上程している。

[事例3] 取締役候補者に対する監査等委員会の意見(セントラル警備保障

 協議の結果、監査等委員会としては監査等委員でない取締役の選任等および報酬等について株主総会で陳述すべき特段の事項はないとの結論に至ったと記載している。

[事例4] 取締役会、各委員会の運営状況(吉野家ホールディングス

 取締役会、報酬諮問委員会、指名諮問委員会、独立社外役員会のそれぞれについて、構成、役割、運営状況について記載している。

[事例5] コーポレートガバナンスハイライト(ミニストップ

 「コーポレートガバナンスハイライト」として、在任年数、年齢、独立性比率について円グラフを用いて記載している。

 

Ⅳ 役員報酬関連議案

 監査役会設置会社および監査等委員会設置会社における取締役および監査役の報酬、賞与その他職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益は、定款に定めていないときは株主総会の決議によって定める必要がある(会社法361条、387条)。また、ストック・オプションとしての新株予約権有利発行議案(同法238条)の対象に役員を含む場合には、役員報酬等としての決議も必要となる。

 なお、指名委員会等設置会社の取締役および執行役の個人別の報酬等の内容は、報酬委員会で決定される(会社法404条3項、409条)。

 1 付議の状況

 2024年5月総会の調査対象86社において、役員報酬関連議案を付議した会社は15社(17.4%)あった。このうち、金銭報酬議案を付議した会社が8社、株式報酬議案を付議した会社が12社あった。

 (1) 金銭報酬議案

 ア 金銭報酬議案の付議内容

 各社の金銭報酬議案の付議内容は図表26 のとおりである。

[図表26] 金銭報酬議案の付議内容

付議内容 社数
金銭報酬枠設定議案 7社
役員賞与支給議案 1社
役員退職慰労金支給議案 0社

 イ 金銭報酬枠設定議案の上程理由

 金銭報酬枠設定議案の上程理由を分類すると図表27のとおりである。

[図表27] 金銭報酬枠設定議案の上程理由

上程理由 社数 記載会社
① 経済情勢、経営環境、経営体制の変化等 2社 ピックルスホールディングス、乃村工藝社
② 取締役・監査役の増員 2社 スギホールディングス、髙島屋
③ 優秀・多様な人材の確保 1社 ヨシムラ・フード・ホールディングス
④ インセンティブの付与・強化 2社 わらべや日洋ホールディングス、乃村工藝社
⑤ 取締役・監査役の責務・役割の増大 2社 ヨシムラ・フード・ホールディングス、髙島屋
⑥ 監査等委員会設置会社への移行 2社 アダストリア、ライフコーポレーション
 (2) 株式報酬議案

 各社の株式報酬議案の内容は図表28のとおりである(重複集計)。

[図表28] 株式報酬議案の付議内容

付議内容 社数 記載会社
パフォーマンスシェア議案 3社 DDグループ、平和堂、乃村工藝社
譲渡制限付株式報酬議案 6社 ヨシムラ・フード・ホールディングス、SFPホールディングス、チヨダ 等
信託型株式報酬議案 5社 わらべや日洋ホールディングス、アレンザホールディングス、ウイングアーク1st 等
ストック・オプション議案 0社

 2 記載事例

[事例1] 新旧の報酬体系(乃村工藝社

 現行の報酬体系と議案可決後の新体系の構成について棒グラフを用いて示している。

[事例2] 株式報酬の支給内容の変更(わらべや日洋ホールディングス

 納税資金確保の観点から株式報酬の一部を金銭に換価して支給する制度に変更することとしている。

 

Ⅴ その他の議案

 2024年5月総会の調査対象86社のうち、Ⅰ~Ⅳに掲げた議案以外の議案の内容は、図表29のとおりである。

[図表29] その他の付議議案

議案 社数(割合) 記載会社
補欠役員選任議案 21社(24.4%) ドトール・日レスホールディングス、古野電気、髙島屋 等
役員退職慰労金支給議案 3社(3.5%) しまむら、エーアイテイー、アークス
役員退職慰労金制度廃止に伴う打ち切り支給議案 1社(1.2%) しまむら
ストック・オプションとしての新株予約権有利発行議案 1社(1.2%) 西松屋チェーン
吸収合併契約承認議案 1社(1.2%) ベイカレント・コンサルティング
資本準備金減少議案 1社(1.2%) バロックジャパンリミテッド
買収防衛策関連議案 2社(2.3%) 西松屋チェーン、イオン

 各議案の事例については、各社のウェブサイト、EDINETあるいは証券取引所の上場会社情報サービス等をご確認いただきたい。

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